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事件概要
果実と聞いて、何を思い浮かべますか?
リンゴ?ミカン?
法律の世界では、それだけじゃないですね。

物件2の土地の中央付近にある畑は、当社で働いていた外国人実習生が食用に大根等の野菜を育てているのだと思います。
せっかく作っているので、収穫させてあげたいと思います。
何気なく読み飛ばしてしまいそうなこの陳述ですが、厳密に考えてみると、問題アリなのかもしれません。
キーワードは『果実』です。
果実とは?
今回ご紹介する法律の世界での果実は、リンゴやミカンといった我々の日常生活で使う言葉を離れ、より拡張された概念です。
まず、定義を確認します。
民法における果実とは、物から生じる収益を言います。
果実には天然果実と法定果実があります。
- 天然果実:物の用法に従い収取する産出物
- 法定果実:物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物
これでは、分かりにくいですね
天然果実の例を挙げてみましょう。
- 果樹園で収穫された果実
- 牛から絞った乳
- 馬から生まれた仔馬
- 鉱山から採掘した鉄鉱石
このように、リンゴやミカン等の文字通りの『果実』に限らず、ある物から産まれた物のことです。
また、果実を生み出す物を元物と言います。
ただし、牛を屠殺して得られた食肉は果実と呼ばないようです。
あくまでも、元物を損なわずに得られた物のことで、これが『物の用法に従い収取する』ということです。
次に法定果実の例を見てみましょう。
- マンションの賃料
- 貸付金の利息
- 株式の配当金
このように、元物を持つことで得られる、主に金銭的な利益のことを法定果実と言います。
フルーツや野菜など、本来の意味の『果実』のイメージに近い物から始まり、どんどんと抽象化して、最終的には金銭的利益という概念的な『果実』にまで拡張されました。

儲かる事業や投資のことを『金のなる木』と言ったりしますけど、まさに果実のイメージですよね。
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果実は誰のもの?
果実とはどのようなものを指すのか確認したところで、次に果実は誰のものか?という点について確認したいと思います。
果実は誰のものか、ということを法律用語では果実の帰属と言います。
天然果実は、元物から分離する際に、これを収取する権利のある人に帰属します。
分かりやすいのは所有者です。
例を挙げると、牛の所有者が、牛乳の所有者となるわけです。
また、所有権は無くとも、正当に収取する権利のある善意占有者、地上権者、永小作権者、賃借権者、不動産質権者もこれに当たります。
他方、法定果実はというと、天然果実と同じように権利者に帰属するわけですが、金銭は分割可能なので、例えば月の途中に所有者が変わったときには日割りすることもできます。
抵当権と果実
さて、いよいよ話は大詰めです。
抵当権と果実について確認しましょう。
抵当権とは、担保物権の一つで、もしもお金を返せないことがあったときに、この物件を競売にかける権利のことです。
ここで、お金が返せなくなることを債務不履行、実際に競売にかけることを抵当権の実行と言います。
抵当権はトラブルが起こらない限り、出番はありません。
そのため、抵当権が設定されていても、抵当権者に果実は帰属しません。
こうやって書くと分かりにくいかもしれませんが、投資用のマンションを買うときに融資してもらったからといって、銀行に家賃を取られないというごく当たり前のことです。
ところが、債務不履行に陥ると、話は変わってきます。
債務不履行になると、果実に対して抵当権の効力が及ぶようになります。
例えば、抵当権者が家賃を代わりに受け取ることもできるんです!
このことを物上代位による差押えなんて言います。
もちろん、賃料のような法定果実だけでなく、天然果実にも及びますから、今回の事件の畑の野菜にだって効力が及ぶ可能性があるわけです!

まぁ、今回の物件のメインは畑ではないですし、個人的に食べるために外国人実習生が育てていた野菜を収穫したところで大きな問題にはならないでしょうが、法律上、そういうことなんだよ、というのは理解しておいたほうがいいと思います。
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