- 借地権付き建物を競売で取得したときの借地権の譲渡に関して
- 借地借家法第20条に基づく申し立てが出来る
- 申し立てをするときに気をつけなくてはいけない点
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事件概要
この事件では、建物のみが競売されています。
つまり、現在の所有者は地主に土地を借りているということになります。
ところが、今回の地主は次のように述べています。
競売により新所有者に対して、この土地を貸すかということですが、その方を見て、契約をするかどうかを決めたいと思います。また、契約をするにしても、地代をずっと上げていませんので、地代は上げたいと思います。
なるほど、これは穏やかではありません。
もし地主が土地を貸すことを拒んだら、建物の買受人はどうすることもできないのでしょうか?
今日は、この事件を題材に、借地権の譲渡について解説したいと思います。
借地権の譲渡について
一般に、借地権付きの建物を競売で取得したとき、所有権と一緒に借地権も移転すると解釈されます。
これだけ聞いて、
なーんだ、問題ないじゃないか
と安心するのは尚早です。
借地権設定者である地主の承諾を得ずに建物を使っていると、『無断で借地権を譲渡した』あるいは『転貸した』とみなされて契約解除にまで持ち込まれる可能性もあります。
陳述書によると、今回の地主は承諾するか分かりません。
もしも実際に地主さんと会って、この人には貸さない、なんて思われた日には、どうしたらいいのでしょうか。
貸さないと言われたら、建物を取り壊さなくてはいけないのでしょうか?
実は、このような場合に、借地人である買受人があまりにも弱い立場であることから、保護される制度があります。
- 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
- 前条第2項から第6項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。
- 第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。
- 民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)第19条 の規定は、同条 に規定する期間内に第1項 の申立てをした場合に準用する。
- 前各項の規定は、転借地権者から競売又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第2項において準用する前条第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。
つまり、よっぽどの断る理由がなければ、裁判所が代わりに承諾をしてくれるということです。
しかも、当事者間の話し合いで条件がまとまらないときには、裁判所が条件を決定してくれるのです。
今回の事件の資料にも、目立たないですが、そのような記述はあります。
『買受人は、地主の承諾又は裁判等を要する。』
この一文から、借地借家法第20条の申し立てだとピンとこないといけないわけです。
申し立てに必要な書類は、こちらからダウンロードできました。
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裁判所への申し立てで気をつけること
実際に申し立てする際に、気をつけなくてはならない点がいくつかあります。
代金納付から2ヶ月以内に申し立てること
裁判所への申し立ては、代金納付から2ヶ月以内に行う必要があります。
知らなくて遅れた、は言い訳になりませんから、絶対に忘れないようにしましょう!
借地権価格の1割程度の費用を地主に払うこと
これは、地主側の利益を考えての制度のようです。
今回の事件の借地権の価格はいくらくらいでしょうか?
資料によれば、2,341,000円とのことなので、地主には23万円程度の支払いが必要かと思われます。
落札したらどうすればいい?
裁判所に承諾を求めるという手はありますが、まずは地主と話してみるのがいいと思います。
というのも、地主とは将来にわたって長い関係を築いていくのでしょうから、可能ならば良好な関係でいたいものです。
それで、どうしても話がまとまらなかった際には、裁判所に申し立てをしましょう。
くれぐれも、代金納付から2ヶ月以内というのをお忘れなく!
地主側からすると、自分の土地の上に、他人の建物があるというのは、何かと面倒なことになりがちだから、できれば避けたいですね。
- 借地権の無断譲渡はダメ
- 地主か裁判所の承諾をもらいましょう
- 裁判所への申し立ては2ヶ月以内
- 借地権価格の1割程度の金員が必要
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