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事件概要
あまり見慣れない特約のついた物件です。
この建物には、買戻特約登記がされていると記載されています。
原因 昭和13年3月29日特約
期間 昭和15年2月まで
買戻権者 A(親戚ではない誰か)
この記事では、この事件を通して、買戻特約について、そこから敷衍して、取得時効についても確認したいと思います。
買戻特約登記とは?
そもそも買戻特約とは何のことでしょうか?
買戻特約
https://www.re-words.net/yougo/1710/
私法上の概念で、「売主が代金額および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことができる」とする特約をいう。
なるほど、売買代金と契約費用を返金して、物件を返してもらうことができる特約なのですね。
そして、買戻権を第三者に対抗するためには、所有権移転登記と同時に登記する必要があるということです。
売主が買戻権を行使できる期間は最長で10年であり、10年を超える契約はできず、10年に短縮されます。
なお、期間の定めがない場合は、5年とすることになっています。
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今回の物件はどうなるの?
今回の物件については、昭和13年3月29日付で設定されていて、期間は昭和15年2月までとされています。
したがって、期間までに買戻権が行使されていれば、競売の買受人よりも優先される権利として買戻権が存在するものとして扱われます。
ただ、債務者の陳述によると、この登記について知らなかったと言っていますし、買戻権者のことも知らないようです。
そう考えると、仮に買戻権者が買戻権を行使して、所有権が買戻権者に移転していたとしても、債務者は①所有の意思で、②平穏かつ公然と、③一定期間(80年近く?)、④他人の物を占有し続けた、と言えるのではないかと思います。
これは、取得時効の成立要件を満たしています。
取得時効とは、一定の期間、権利を継続して事実上行使する者に、その権利を取得させる制度をいいます。
ちなみに一定期間とは、占有開始時点において善意無過失であれば10年、悪意または有過失であれば20年です。
この物件に関しては昭和13年〜昭和15年の話ですから、悪意または有過失だとしても十分すぎる期間を占有していることになります。
ですので、買戻権者Aやその相続人などが、登記を備えて『この建物の所有権は私にあります』と言ってきたところで、時効の援用をすればいいのだと思います。
時効により利益を受ける意思表示のことを「時効の援用」と言います。

時効の効力は、時効の援用をしないと発生しません。
登記の公示力と公信力
ここで、登記の公示力と公信力ということについて触れておく必要があるかと思います。
詳しくまとめた記事がこちらにありますので、ご参照ください。
今回の事件で、どうしてこんな古い買戻権について触れなくてはいけないのかというと、登記されている情報が真実とは限らないからなんです。

このことを『登記に公信力がない』と言います。
今回の物件についても、登記はないけれど、過去に遡ると買戻権を行使して所有権が移転しているかもしれない、ということです。
登記をしていないと、第三者には対抗できませんが、当事者に対する対抗は意思表示のみで十分なのです。
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買戻権抹消登記
こんなことになる前に、自分にとって不利な権利関係がなくなったときには、抹消登記をしてしましょう。
どうしても記憶というのは当事者でさえ薄れていくものですし、まして相続などした際には、どれが真実かなんてわからないのです。
今回の物件に関しても、買戻特約の期限を迎えたときに抹消登記さえしておけば、このような面倒なことを考えずに済んだわけです。
競売では、ちょっとでも面倒そうな権利関係があるな、と思うと入札しない人が出てくるでしょう。
そして、評価額も市場性修正として50%も下げられています。


万が一、自分の物件が競売されることになったときに、少しでも自分を助けてくれるような状態にしておくことはリスク管理の一つと言えるでしょう。
登記は自分でもできる!
そして、買戻権抹消登記も、自分でできる登記の一つです!
(というか、自分でできない登記はないはず…)
登記の目的
×番付記×号買戻権抹消

登記にある通り転記します。
登記原因及びその日付
年月日 買戻期間満了
申請人(共同申請)
権利者 所有者
義務者 買戻権者

登記で有利になる人を権利者、不利になる人を義務者と言います。
添付書類
登記原因証明情報
買戻権者の登記識別情報又は登記済権利証
買戻権者の印鑑証明書
※委任状(委任する場合)
※第三者の承諾書(利害関係者がいる場合)
不動産免許税
不動産1つにつき1000円
必要書類を揃えたら、登記相談の予約をしましょう!
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