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事件概要
国から登録有形文化財の指定を受けている酒屋の店舗です。

登録有形文化財って、観光地とかでよく聞きますけど、自分で所有するなんて考えたこともなかったし、詳しいことはあんまり知らないなぁ…
ということで、今回は、この物件をもとに、登録有形文化財について調べていきたいと思います!
そもそも登録有形文化財って?
そもそも『登録有形文化財』とは、何なのか?
文化庁のwebサイトを見てみましょう。
平成8年10月1日に施行された文化財保護法の一部を改正する法律によって,保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物を,文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する「文化財登録制度」が導入されました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/
この登録制度は,近年の国土開発や都市計画の進展,生活様式の変化等により,社会的評価を受けるまもなく消滅の危機に晒されている多種多様かつ大量の近代等の文化財建造物を後世に幅広く継承していくために作られたものです。届出制と指導・助言等を基本とする緩やかな保護措置を講じるもので,従来の指定制度(重要なものを厳選し,許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完するものです。
ここでいう『従来の指定制度』とは『国宝』『重要文化財』のことですから、そこまでいかないけど、後世に残すべき文化財建造物を、文部科学大臣が登録して、保護措置等を講じましょうよ、という制度のようです。
では、その登録の基準はどのようなものでしょうか?
原則として建設後50年を経過したもののうち、
- 国土の歴史的景観に寄与しているもの
- 造形の規範となっているもの
- 再現することが容易でないもの
これらの基準のいずれかを満たす必要があるようです。
ちなみに、全国には1万件を超える登録があります。

有名どころだと
- 東京タワー(東京都港区)
- 大阪城天守閣(大阪府大阪市)
なんかも、登録有形文化財なんだそうです。
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所有者のメリット&制限
もしもあなたの所有する建物が登録有形文化財として文部科学大臣に登録されたら、どのようなメリットがあるのでしょうか?
【登録有形文化財建造物修理補助事業】
保存・活用に必要な修理等の設計監理費の 2 分の 1を国が補助
【登録有形文化財建造物を活用した地域活性化事業】
地方公共団体などが行う地域活性化事業にかかる費用の2 分の1を国が補助
【相続税】
相続財産評価額(土地を含む)を10 分の 3 控除(国税庁通達)
【固定資産税】
家屋の固定資産税を 2 分の 1に減税(地方税法)
なるほど、建造物を後世に残すという目的のために金銭的な優遇措置が設けられています。
その反面、当然のことながら、様々な制限もあります。
- 滅失
- 毀損
- 現状変更
- 所有者の変更
→ 届出を怠ったり、虚偽の届出をすると過料等の罰則あり
- 管理、修理に関する技術的指導
- 届出のあった現状変更に対する指導、 助言又は勧告
- 公開及び公開に係る管理に対する指導又は助言
登録された状態から何かしらの変化がある場合には、原則届出をしなくてはならず、その際に文化庁から指導等があるということです。
活用方法は案外自由!スタバも!
ここまで読むと、何となく、堅苦しい感じがしてしまう登録有形文化財ですが、きちんと届出をすれば活用方法は自由みたいです。
例えば、青森県弘前市の旧第八師団長官舎(弘前市長公舎)には、スターバックスコーヒーが出店しており、大変人気になっているようです。

弘前公園前店は日本有数の桜の名所である弘前城公園の目の前に位置し、日本で2店舗目となる登録有形文化財の店舗となります。
https://store.starbucks.co.jp/detail-1302/?mode=concept
1917年に陸軍師団長の官舎として建設された木造の建物で、和洋折衷のデザインが特徴的です。
建物そのものの意匠を大切にし、地域の素材や伝統工芸をアレンジしながらデザインに取り入れることで、建物と弘前の歴史に敬意を払いながらスターバックスのコーヒーネスを表現しています。

なんとなく、国が指定する文化財ですから堅苦しい用途しか認められないのかな、なんて思いがちですが、このようなバリバリ商業目的でもOKみたいですね。
他にも、博物館、レストラン、イベント会場等に活用されているようです。
すると、行政のWEBページや各種メディアでも取り上げられるので、集客力がある物件と捉えることもできそうですね。
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『小松酒店店舗兼主屋』
ここまで、国指定登録有形文化財についてザッとまとめてみましたが、今回の事件に戻りましょう。
今回競売されたのは新潟県三条市の小松酒店店舗兼主屋です。

解説文を引用すると、
商店街に北面して建つ、木造二階建、入母屋造、妻入りの町家。東側に通り土間を通し、一階は正面に店舗を構え、奥に事務所と居間、二階はヒロマ等の座敷を一列に配する。せがい造の入母屋屋根が三条の町家の特徴をよく示し、通りの歴史的景観に寄与する。
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010567
とのことで、登録基準のうち『国土の歴史的景観に寄与しているもの』として認められています。
『せがい』は漢字で『船外』『船枻』と書く。写真のように、二階が一階よりも外側に迫り出すようなつくりのことで、新潟を始め、雪深い地域の民家に見られる。

確かに、この門構えは非常に趣がありますよね。
国から登録有形文化財に指定されたのも納得の外観です。
先述の通り、きちんと届出をすれば活用方法は柔軟に考えられますし、税制等の優遇もありますから、登録有形文化財でビジネスを始める、なんていうのもアリなのかもしれません。
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