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事件概要
今回は、部屋の中の掛け軸に注目しました。
部屋に『書』を飾る
皆さんは、部屋に『書』を飾っていますか?
凡そ芸術作品というのは、日常生活に不可欠ということはなく、ある程度の『余裕』みたいなものがないと購入するものではありません。
ですから、お金を払って買った場合、書を飾るというのは、よっぽどその作品に感銘を受けていないとありえないことだと思うのです。
また、自分で書いたという場合も、書かれている内容に共感した、など思い入れは強いものでしょう。
では、今回の占有者は、どのような思いをこの書に込めていたのか。
少しだけ思いを馳せてみたいと思います。
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陶淵明とは?
陶淵明(とうえんめい)とは、中国の詩人です。
![](https://keibaihunter.com/wp-content/uploads/2019/11/Tao_Qian-630x1024.jpg)
365年に生まれ427年に亡くなったとされており、有名な杜甫や李白よりもずっと昔の人です。
下級士族の出身で、公職に就くも、仕事がキツく辞職を繰り返す日々だったそうです。
彼が愛したのは酒、自然、琴、そして詩だったそうです。
陶淵明は40歳頃から隠遁生活をします。
そこから悠々自適な生活を送り、その生活を元にした数多くの詩を作ったと言われています。
![競売ハンター](https://keibaihunter.com/wp-content/uploads/2019/06/zx4YRtod_400x400.jpg)
酒と自然と音楽と詩を愛するって、なんか自由人って感じだなぁ笑
と思いきや隠遁生活の間にも朝廷から仕事の依頼が来た(全部断る)らしいので、実はかなりのデキる人です。
実際、こんな生活を送るにはかなりの覚悟と生きる力がないと無理よね。
飲酒二十首 其五
陶淵明の代表作と言われているのが『飲酒』です。
なんじゃそりゃ、というタイトルですが、別に酒のことばかり書いているわけではありません。
酒を飲んで、徒然なるままに、自然や人生についての詩をまとめたものだそうです。
今回、飾られていた『悠然見南山』というのは『飲酒』の中でも最も有名な其五の一節です。
![](https://keibaihunter.com/wp-content/uploads/2019/11/スクリーンショット-2019-11-29-15.05.53.png)
結廬在人境 廬を結びて人境に在り
而無車馬喧 而も車馬の喧しき無し
問君何能爾 君に問ふ 何ぞ能く爾ると
心遠地自偏 心遠ければ 地 自ら偏なり
採菊東籬下 菊を採る 東籬の下
悠然見南山 悠然として南山を見る
山気日夕佳 山気 日夕に佳し
飛鳥相与還 飛鳥 相ひ与に還る
此中有真意 此の中に真意有り
欲弁已忘言 弁ぜんと欲して已に言を忘る
人里に住まいを構えても、車や馬の騒がしさがない。
なぜそんなことができるのか?
心を遠い地に馳せていれば、自然とその地も辺鄙になってくるのだ。
東の垣根の下で菊を摘み、悠然と南山を見る。
山の景色は、夕方が素晴らしい。
飛ぶ鳥はみんな一緒に巣に帰っていく。
この中に真意があるのだ。
ところが、それを語ろうとしても、言葉を失ってしまう。
(筆者のざっくりとした訳)
隠遁生活をして自然を愛した陶淵明らしさの表れた作品になっています。
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占有者は人生をどう振り返ったか?
そんな陶淵明の詩を飾る占有者は自分の人生を振り返るように陳述をしています。
![占有者](https://keibaihunter.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/obasan.png)
本件建物には私が居住しています。
所有者Bは私の伯父です。私の母は所有者の妹です。
所有者が本件建物を出て、30年前位でしょうか、私が9歳のときに本件建物に引っ越してきて以来、ずっと居住しています。
私が引っ越してきた頃からは私の両親と祖母が呉服店を営み、店舗兼居宅として使用していました。
ですが、母が病気になり、営業を続けていけなくなりました。平成18年頃だったかと思いますが、その頃からは営業はしていません。所有者は私の知る限り、呉服店の営業には関わっていません。
祖母は13年前位、母は10年前位になくなり、3,4年位前に父も他界しました。
呉服店というと、洋服を着て生活する私のような人間には縁遠い存在です。
『歴史の教科書に出てきたな』くらいの認識なのですが、実はこの建物もかなり古いんです。
固定資産評価証明書に記載されている建築年は慶応元年とのことです。
『慶応』は明治の前の元号で、慶応元年は1865年のことですから、築150年というびっくりするような建物です。
![競売ハンター](https://keibaihunter.com/wp-content/uploads/2019/06/zx4YRtod_400x400.jpg)
そのせいか、東日本大震災の影響で、壁が大きく崩れてしまっています。
![](https://keibaihunter.com/wp-content/uploads/2019/11/スクリーンショット-2019-11-29-15.04.59.png)
この物件の所在地である那須町には皇族の利用する那須御用邸がありますから、日本を代表するリゾート地(?)であるといえます。
当然、自然が豊かで静かな土地ですから、陶淵明のように穏やかに暮らすのには最適だったのかもしれません。
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