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はじめに
私は、かれこれ1年ほど、とある雑居ビルの一室をレンタルスペースとして活用させてもらっています。
物件の所有者は私の親戚です。
物件は繁華街の築古物件で元々はスナックが営業していたそうです。
そのスナックはすでに退去しているのですが、カウンター、椅子、棚、照明などはそのままにされていました。
私の知人で飲食関係の仕事とつながりの多い人に頼んでみるも、すぐに借り手は見つからず、別の作戦を考える必要に迫られていました。
そこで思いついたのが『レンタルスペース』として活用してみることでした。
レンタルスペースは、賃貸借契約ではなく、数時間〜1日の利用に対して対価を受け取るというビジネスです。
近年盛り上がりを見せている『民泊』と違い、宿泊させることはありませんので、日数制限や旅館業の許可なども不要です。
私は、かれこれ1年ほど、そのスペースをレンタルスペースとして活用させてもらっているのですが、このところ面白い現象が続いているので、ご紹介したいと思いました。
集客は『スペースマーケット』
私がこのスペースをレンタルするための集客に利用しているのは『スペースマーケット』です。

おそらく、レンタルスペースのプラットフォームとしては日本の最大手でしょう。
私自身も、貸会議室や貸スタジオをスペースマーケットを通して借りた経験がありました。
集客のためには、とにかく多くの人に見てもらわなければいけませんから、まずは大手のサービスで初めてみると良いだろうと考え選択しました。
スペースマーケットは、物件の画像や住所、設備等を入力すると誰でも簡単にスペースを公開できるサービスです。
利用者とメッセージのやり取りをできたり、Googleカレンダーと予約状況を同期できたりとかなり使い勝手は良いです。
スペースマーケットへの物件の掲載は無料で、売上が発生してはじめて手数料を支払います。
手数料は売上の30%と、やや高い印象を受けますが、それだけのプロモーションをしてくれている実感はあります。
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どんな目的で使われたか?
そんなこんなで公開したレンタルスペースは、開始直後から月に1件程度ずつ利用されていきました。
これまでに利用された用途としてはこんなものがあります。
- 飲み会(これが一番多い)
- ボードゲーム大会
- (コスプレ)撮影会
どうやら
- 単なる飲み会ではなく、非日常的な空間で楽しみたい
- 周りの目を気にせず楽しみたい
- 盛り上がっても近隣に迷惑をかけたくない
といったニーズがあるようです。
利用者には、スナックの大きなカウンターと、レトロな雰囲気が好評をいただけているようです。

余談ですが、今年の夏に某化粧品系マルチ商法のセミナーに使われそうになったのですが、空調が壊れてしまい、お断りすることになりました。
不思議な現象が起きる
そんなレンタルスペースで、ある時期から不思議な現象が起こるようになってきました。
レンタルスペースにちょっとずつ物が増え始めたのです。
- クリスマスツリー
- 小堺一機が振るサイコロ
- ボードゲーム・カードゲーム
- 食器
- お菓子、飲み物
- キッチンペーパー、ウェットティッシュ
最初のきっかけは、ちょっとしたお菓子だったと思います。

昨日の利用者の方が残していったお菓子なのですが、未開封なので、よかったらどうぞ。
要らなかったら捨てて構いませんから。
スペースの利用前にそう伝えて、お菓子を渡しました。
すると、そのときの利用者が、帰り際に

よかったら、僕たちの買った割り箸や紙皿を使ってください!
そう言って、わざわざ購入したものを置いていってくれたのです。
さらに別の日には

このカードゲーム、よかったら面白いので他の人にも楽しんで欲しいです。

クリスマスツリーと飾り、よかったら使ってください!

洗剤やウェットティッシュ、買い足しておきましたので!
あと、便座カバー付けておきました!
などなど、次々と嬉しい残置物が増えていったのです!
このスペースで何が起こったのか考えてみると…

このスペースを快適に利用するのに必要なものを購入したけど、スペースの利用が終わったら、わざわざ持って帰るほどのものではないなぁ。
↓
そういえば、ホストの人が『このお菓子は前の人が残していった』と言っていたな。
↓
ちょっと嬉しかったし、いくつか食べたから、せっかくなら私も次の利用者に使ってもらおう。
こんな感じではないでしょうか。
最近では、自分で買って置いているお菓子も『前の人が残していったんですよ』と言うようにしてます。
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マルセル・モースの『贈与論』
さて、この現象が起こったときに思い出したのは、社会学者・文化人類学者・民俗学者であるマルセル・モースの『贈与論』です。
モースは、様々な民族の『贈与』や『交換』の風習を研究しました。
その中で『人は贈与を受け取ると負債を背負ったような感覚になる』ため『返礼の義務があると感じる』のだと考えました。
不思議な感じがしませんか?
贈与を受け取ったら『嬉しい』と思うだろうというのが貨幣経済で生きる人間の日常的な感覚です。
しかし、そうではなく、それは負債なのだと言ったわけです。
そして、その負債は直接受け取った相手に返すことができません。
なぜなら、もらったものを返すことは失礼だからです。
では、どうするか?
『別の誰か』に返礼するわけです。
そしてそれを受け取った誰かは、また別の誰かを探して負債を返す。
その繰り返して、ぐるぐると社会全体を贈与が巡っていく、というイメージです。

で、まさにその贈与と返礼の応酬が、我がレンタルスペースで起きていたのではないか、と感じたわけです。
貨幣経済ではない、全く別の原理がここで働いている…?などと考えるとワクワクしてきます!
興味深いので、これからも観察を続けていこうと思います。
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