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民事執行法の改正が決定
令和元年5月10日に、『民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第2号)』が成立しました。
びっくりするくらい長いネーミングなので、ついつい読む気がなくなってしまいますが、読んでみると不動産競売に大きく関係する改正でしたので、簡単に説明したいと思います。
今回の改正は、3つの主なトピックがあります。
- 債務者財産の開示制度の実効性の向上
- 不動産競売における暴力団員の買受け防止
- 国内の子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行に関する規律の明確化
このうち、1,2に関しては、不動産競売と非常に密接なので、この2点を中心にまとめてみたいと思います。
債務者財産の開示制度の実効性の向上
不動産競売をはじめとする、強制執行を裁判所に申し立てるには、執行の対象となる債務者の財産を債権者が特定する必要があります。
ところが、それって結構難しくないですか?
〇〇銀行〇〇支店に秘密の預金口座を持っているし、
▲▲県▲▲市に相続した不動産も持っている。
こんな情報、普通に調べられないですし、ましてや債権者が債務者に聞いたところで教えてくれないでしょう。
そんなわけで、これらの情報を金融機関や登記所と連携して取得できるような手続きを新設するというのが今回の改正の1つ目のポイント。
そして、財産開示手続きに関して、申し立てできる債権者の範囲を拡大して、仮執行宣言付判決や公正証書を持っている人でもできるようにしました。
また、債務者の不出頭や虚偽陳述に対する罰も厳罰化し、手続きの実効性を向上させるよう見直されています。
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不動産競売における暴力団員の買受け防止
不動産競売って怖い
そんな意見がなくならない理由は、暴力団が絡んでくるイメージがあるからかもしれません。
警察庁の調査では、全国1700箇所の暴力団事務所のうち、約200箇所で不動産競売の経歴を有していることが判明したそうです。
それもそのはずで、現行法では、暴力団員の買受けを制限する規定はありません。
したがって、暴力団が不動産を取得するための方法として競売が利用されることがあるわけです。
ところが、今回の改正により、買受申出人に暴力団員等に該当しないことなどを陳述してもらったり、警察への照会をしてもらったりすることで、暴力団員等への売却を防ごうとしています。
虚偽の陳述には刑事罰があるよ!
この施策がどれだけ効果的なのかはわかりませんし、落札するまでの手間や時間がさらに増える可能性はありますが、不動産競売の負の側面が少しでもなくなるように期待したいです。
国内の子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行に関する規律の明確化
これは、正直、不動産投資にはあんまり関係ないので、簡単に流しますが、離婚後等の子の引き渡しに関する改正です。
現行法に明文がなく、動産に関する規定を類推適用していましたが、子供の引き渡しとなると、健康や安全の心配もあるので、きちんと子供の利益を守るような法整備が必要ですよね、という話。
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民事執行法のその他の見直し
主な改正は上記の3テーマですが、その他にも、改正される箇所があります。
子の引き渡しよりは、こちらの方が我々には身近かもしれません。
差押禁止債権をめぐる規律の見直し
普段、このブログでは不動産競売の事ばかり扱っていますが、差押えで最も身近なものは、給与債権だと思います。
債務者が会社勤めをしている場合、債権者は会社が債務者に対して払う給与を差押えて、代わりにもらうことができます。
しかし、給与を全て差押えられてしまうと債務者が生活できないですよね。
そこで、給与のうち、最低限の生活を送るのに必要な金額は差押えを禁止しています。
今回の改正では、この点をもっと債務者に活用してもらいましょうよ、という改正のようです。
債権執行事件の終了をめぐる規律の見直し
また、取り立てずに放っておかれてる事件については、終了させましょうという仕組みも導入されるようです。
いつから施行されるの?
令和元年5月17日から1年以内に施行されます。
(※令和元年7月17日現在、まだ施行されていません。)
ただし、登記所から債務者の不動産に関する情報を取得する手続きは、2年以内とのことです。
日本は法治国家なので、極端な言い方をしてしまえば、最後の最後は法律が全てです。
『法律を知らなかった』は、言い訳になりませんから、このようなアップデートについていくことも非常に重要です。
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