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事件概要
そっくりこのまま民法か何かの試験に出てきそうな事件です。
占有者Aは、金に困った仕事仲間で友人だったDさんに頼まれて、土地と建物の所有名義をDさんに貸したそうです。
所有権移転登記もしましたが、後日、所有名義をAさんに返すという約束だったとのことです。
金銭をもらっていないということなので、贈与、ということになるのでしょうか。
いずれにせよ、譲渡し、登記を済ませたわけです。
ところが、Dさんは約束を破ります。
DさんはAさんに返すという約束をしていたにもかかわらず、Cさんに所有権移転登記をされてしまいます。
しかも、その旨を説明されたのは、登記を済ませた後。
Dさんは連絡がつかなくなり、行方不明。
そして、所有者となったCさんですが、抵当権を実行され、担保にしていたこの物件が競売されることになったわけです。
納得できないのはAさん。
Aさんは、自分に所有権があると主張しますが…
うーん、、、登場人物3人とも、全員に何かしら問題があるw
所有権の第三者対抗要件は登記!
民法では、所有権を第三者に対抗するためには、登記が必要だと定められています(対抗要件主義)。
とすると、この事件において、所有権を登記しているのはCさんですね。
ところが納得できないのはAさん。
だって、Dさんに所有権移転登記したとき、本当は譲渡する意思はないのです。
このような取引は通謀虚偽表示といって、この意思表示は無効になります(民法第94条)。
つまり、この時点では、AさんはDさんに対して、所有権を対抗=主張できるわけです。
しかし、ここからが問題。
じゃあ、AさんとDさんの間の意思表示は無効だったとして、AさんはCさんに対して所有権を対抗できるのか?
民法第94条2項で、「通謀虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できない」と定められています。
ここでいう善意とは「通謀」を知らなかった、ということです。
そりゃそうですよね。登記までされて、外見上、所有権はDさんにあるように見えるのですから、Cさんは保護されるべきなのです。
現にこの事件でも、執行官が『占有者(Aさん)の主張する占有権原は対抗できるものではない』と述べています。
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善意の第三者には対抗できない!では善意でなかったら?
今回の事件でいう第三者はCさんです。
ただ、怪しいのが、Cさんが善意だったのか、というところ。
Cさんが悪意だった場合、94条2項の第三者として保護されません。
では、誰がこの善意か悪意かを証明するのか。
答えは第三者(Cさん)です。
Cさんは自分で、所有権移転したとき、通謀について知りませんでした、と示さなくてはならないわけです。
ここでは、登記は対抗要件にありませんので、第三者は登記していなくても大丈夫。したほうがいいと思うけどね。
誰が悪いのか?
この事件、登場人物、全員に問題があります。
Aさん
甘すぎます。
Dさんのためを思ってした行動で、結果的に、自分が家から追い出されなくてはならない状況に陥る可能性があるわけです。
これなら、素直にお金を貸してあげていた方がまだマシだった???
Dさん
この人はひどいw
通謀虚偽表示とはいえ、心配して貸してくれた友達の不動産の所有権を他人に譲渡してしまうのですから。
Cさん
他の2人ほどは悪くない気がしますが、下手ですよね。
抵当権設定=お金借りるためだけにこの物件を所有したのかもしれませんが、競売されたんじゃ仕方ありません。
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民法の勉強するなら?
不動産投資をするのであれば、民法の知識があると非常に役立ちます。
不動産業界にいるのは、海千山千のツワモノ達。
法律行為の原則や例外について、しっかりと理解しておくことが、保身につながります。
知らないうちに、今回の事件のAさんになってしまうなんて絶対に避けたいですよね。
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文章もフランクな感じで、読みやすいですし、YouTubeでの解説も面白いです。
宅建や公務員試験の対策にも、非常に役に立つと思います。
コメント
[…] 競売物件から見る通謀虚偽表示の無効の第三者対抗要件について事件概要そっくりこのまま民法か何かの試験に出てきそうな事件です。占有者Aは、金に困…keibaihunter.com2019.07.03 […]