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はじめに
この記事では競売資料でも頻出の『賃貸借』と『使用貸借』という2種類の契約について競売になったときの違いを中心に解説したいと思います。
まずは定義から確認します。
賃貸借(民法 第601条)
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
使用貸借(民法 第593条)
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
なるほど
- 賃貸借:お金を支払って物を貸し借りする。
- 使用貸借:無償で物を貸し借りする。
という違いがありますね。
定義の違いは分かりやすいので、
お金をもらうかどうかだけね。
こんなテーマわざわざ取り上げる必要ある?
と思われてしまうかもしれません。
実際、何事もなく約束通り借主が貸主に返せば『お金を払うかどうか』だけの違いです。
ところが、世の中、何かとトラブルがあるものです。
そんなときに、賃貸借と使用貸借とでは法律上の権利義務が異なってくるのです。
この点について理解していないと、自分がまだ使っている物を返さなくてはならなくなったり、ある日突然、住んでいた不動産から追い出されたり、なんてこともありますので、頭に入れておくといいと思います。
このブログでは、競売物件の紹介をしていますので、この記事でも賃貸借あるいは使用貸借している人がいる物件が競売された場合についても考えてみたいと思います。
賃貸借している物件が競売されたら?
まずは賃貸借している物件が競売された場合について考えましょう。
この場合、賃貸借契約と抵当権設定のどちらが先かが重要になります。
(強制競売(ヌ)の場合は差押との前後関係が重要になります。)
※抵当権というのは、簡単にいうと『不動産を貸金の担保にとる』ということです。
- 抵当権設定前に賃貸借契約が結ばれていた場合→賃借権を買受人に対抗できます!
- 抵当権設定後に賃貸借契約が結ばれていた場合→賃借権を買受人に対抗できません!ただし6ヶ月は猶予される!
『対抗できる』とは、民法の用語で『他人に対して権利を主張できる』ことを意味します。
抵当権設定の前からお金を払って住んでいる人は、貸主が勝手に設定した抵当権のための競売では追い出すことは出来ませんよ。
しかし、抵当権設定後に契約した人は『競売になりうることを知っていた』よね?だから、追い出せますよ。
ということです。
ただし、住居の確保というのは人間の生活にとって欠かせないですから、賃借権を対抗できない場合でも、6ヶ月間は明け渡しを猶予されるわけです。
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使用貸借している物件が競売されたら?
では、使用貸借つまり無償で部屋を借りている場合はどうでしょうか?
この場合、借主はかなり弱い立場になります。
というのも、原則、買受人に求められたら、すぐに物件を明け渡さなくてはならないのです。
まー、かわいそうだけど、お金払ってないんだからね。
貸主の厚意で使わせてもらっているということで、あんまり保護されません。
競売以外でも、転貸、貸主の死亡などのケースでなにかと立場が弱いのが使用貸借です。
使用貸借ってどんな状態??
で、使用貸借ってどんなパターンがあるかというと…
- 離婚して夫が家から出て行き、妻と子がそのまま住んでいる。
- 親が子(あるいはその逆)に家を無償で貸している。
- 会社名義の不動産にその代表者や家族が住んでいる。
といった感じです。
私も競売の資料を読み始めるまで、ここまで使用貸借で家に住んでいる人が多いと知りませんでした。
だって、私自身が『実家暮らし』or『賃貸借』しか経験がありませんでしたから。
ところが、結婚して家族ができたり、会社を作ったりすると、使用貸借という契約もあるかもしれません。
そんなときには、頭の片隅でこの記事のことを思い出してもらえたら嬉しいです。
定義
賃貸借:お金を支払って物を貸し借りすること。
使用貸借:無償で物を貸し借りすること。
競売になったとき
賃貸借:契約が抵当権設定より前なら対抗できる。後なら対抗できない(6ヶ月猶予アリ)。
使用貸借:対抗できない。猶予期間もない!
コメント
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