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事件概要
ヤクザのナンバー2を自称する男の建物です。
この物件で気になったのは2点です
- 自称ヤクザのナンバー2を語る男の正体
- 6万円という評価額の理由
この記事では、競売資料を参照しながら、これらの謎について迫ってみたいと思います。
この男の正体は?
まずは、ヤクザのナンバー2を自称するAの陳述を見てみましょう。

私は、Bの妹の夫です。
本件建物所有者Bは、札幌の病院に入院中です。
私は、本件建物の片付けのため滞在しています。
本件建物は、Bの息子にやったと聞いています。
1階にある足場等の所有者は、■■組です。
私は函館の■■組のナンバー2です。
自らヤクザのナンバー2であると告白したA。
しかし、この事件について調査していたこの陳述を怪しんでいました。
執行官の大切な仕事の一つに、競売される物件の所有者や利害関係者の権利関係を明らかにすることがあります。
今回の執行官もあらゆる角度から、探っていきます。

電力需給契約における契約者は、本件申立直近の平成31年4月10日から『A』となっている。
水道契約者は、平成22年11月から『株式会社カワシモ』となっている。なお、同社の代表取締役は『B』である。
本件建物の固定資産税課税台帳の課税者対象者は『B』となっている。
なるほど、ここでもA、Bという二人の人物が登場しました。
ここから、執行官は両者とコンタクトを取っていきます。

令和元年6月28日午前9時20分頃、施錠されていない玄関内に現況調査日通知の連絡文書を置いてきたところ、同午後3時4分頃に、Bを名乗る者から電話連絡があり、札幌に入院している。まもなく函館に戻る旨の話をした。
そして、現況調査をする日に執行官が現地に行くと、そこにいたのはBではなくAでした。

令和元年7月23日の現況調査日に執行場所にいたのは『A』であり、同人はBの義理の弟と陳述していた。
Aは『Bは、現在、札幌の病院に入院している』旨の陳述をしている。
Aは『本件建物の所有者は、Bの息子である』旨の陳述をしたので、所有権を主張する者がいるのであれば執行官に連絡してほしい旨伝えたが、連絡はなかった。
1階の車庫等にある足場等の動産類について、Aは当初、■■組のものである旨の陳述をしていたが、最終的にAのものである旨の陳述をした。
Aは、現況調査立入時に『Bが不在時に立入調査し、写真を撮るのはおかしい』旨の陳述もしていた。
Aがヤクザである旨陳述し、車庫内の動産類は■■組のものである旨の陳述をしていたが、本件内外を含めてそれを証するものは存在しなかった。
Aは、6月28日に『B』と名乗って執行官と電話で話した内容と現況調査時には同じ内容の話をしていた。
以上から『A』と『B』は同一人の可能性が高いと思われることから、本件建物の所有者及び占有者は『B』であると思われる。
なお、同人らが別人としても『A』の独立の占有はないと思われる。
なんと、執行官はAとBが同一人物であると結論付けたのです!

Aとは直接会い、Bとは電話で話した執行官なので『こいつら同じ人じゃね?』と感じたのでしょうね。
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評価額6万円の理由①地上権がない!
次に、この物件が仮にも3階建5LDK+納戸でありながら、評価額が6万円という激安である理由について調べてみようと思います。
まず、この事件で競売されているのは建物のみである、という点があります。
この建物の所在地は函館駅から2kmと立地はかなり良いと考えられるので、土地が含まれていたらかなり評価額は変わっていたと考えられます。
ところで、競売で『土地なし建物のみ』というパターンは珍しくないのですが、多くの場合、地上権の分の値段を上乗せされて評価額が計算されます。
地上権とは、工作物等を所有する目的で土地を利用する権利のこと。
建物は、その土地に存在することができる権利を得るため、地上権があると評価額が上がる。
一方、土地は地上権があると用途が制限されるため、評価額が下がる。
ところが、今回の建物は地上権がありません。
平成30年6月26日に土地賃貸借契約は解除され、同年7月20日に建物収去土地明渡の判決が出ています。
つまり無権限でそこに存在している訳です。
そうなると、当然、この建物の評価額は大きく下がる訳です。

さ、さすがヤクザやで…
評価額6万円の理由②建築確認申請・完了検査を行っていない!
そうは言っても、安すぎやしませんか?と思ったら、評価書に仰天の事実がありました。

本件建物は、廃材等を利用して建てられたものと推察され、使用資材が適法なものなのか、耐震基準を満たしているものなのかが不明である。
建築確認申請及び完了検査について、見当たらずとの回答を得た。(函館市建築行政課にて確認)
現状では、建ぺい率超過の可能性を有する。
2階玄関ドアは、室内用ドアを設置しており、錠前が設置されていないため、施錠できない状態となっている。
3階ホールにある流し台については、給排水設備との接続は確認できなかった。
建物の内壁に損傷及び水漏れ跡が多数見受けられる。
陳述書を読むと、どんどん不安になってきます。
競売だと、経年劣化でボロボロになっている物件を見ることは多いですが、そもそもの品質がひどい物件というのはなかなかありません。
建物価格の計算は、原価率1%とされ、約30万円。

ここに、市場性修正(地上権・建築確認・建築資材等の不安)として×30%、競売市場修正として×70%されて、
30万円 × 30% × 70% ≒ 6万円
となってしまったわけです。
建物の外観・内観をざっと見てみましょう。





お花まで飾られてヤクザらしくない??



というわけで、なかなかパンチのある事件でした。
占有者のゴタゴタでお腹いっぱいなのに、建物のクオリティまでトンデモとは…
まぁ、ヤクザ絡みの違法建築(?)なんて、6万円でも欲しくないなぁ😥
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