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事件概要
この物件にとどまらない、大きな問題に発展しそうな事件です。

土地建物は母のBが所有していましたが、相続関係の問題などで、私が買い戻す予定で株式会社ステイブルトラスト(債務者件所有者)に所有名義を移しました。
買い戻すまでの間は無償で使用していてよいことになっており、使用貸借とするという内容の契約書もありますが、弁護士に渡しているので手元にはありません。
ところが、知らないうちに同社が抵当権を付けてしまい、住宅ローンが組めないために買い戻すことができなくなってしまいました。
私はだまされたと考えており、弁護士に相談して同社を刑事告訴する予定です。
同社は他にも同様の事件を十数件起こしていて、そのうちの一件は告訴状が警察に受理されたと弁護士から聞いています。

建物の占有者であるAの占有権原については、同人の陳述によれば買い戻すまでの間は建物を無償で使用してよいとの取り決めがあるとのことであるので使用借権であると考えられる。
この点について確認するために、株式会社ステイブルトラスト(債務者兼所有者)に対して照会書を郵送したが、本報告書提出時までに何らの回答も得られなかった。
また、本件申立債権者から情報提供を受けた同社の電話番号に電話したところ「おかけになった電話番号は現在使われていません。」とのアナウンスが流れた。
なお、前件(平成30年(ケ)第36号事件)において同社の代表者であるBは「本件土地建物は、Aさんがお金が苦しいということから、買戻特約付の売買契約を締結して所有者(株式会社ステイブルトラスト)が購入したのです。Aさんが買い戻すまでは、無償で住んでいて良いということで了解しています。」と陳述していた。
ざっくりと説明すると、こんな感じの流れです。
- Aさんは、お金に困って、株式会社ステイブルトラストに自宅を売却しました。
- このとき、お金の準備ができたら買い戻す約束をしていました。
- ところが、Aさんがいざ住宅ローンを使って、家を買い戻そうとすると、知らない間に設定された抵当権のせいで、住宅ローンが通らない…
買戻特約とは?
まずは、陳述にあった『買戻特約』について確認しましょう。
買戻特約とは、その名の通り、『一度売却不動産を、売主が再度購入することを予定した特約』のことです。
買戻特約の特徴には、次のようなものがあります。
- 売買契約と同時にする必要がある。
- 買戻の代金は、元の売買代金 + 契約費用。
- 買戻期間は最長10年、期間の定めのないときは5年。
- 登記できる。
日常生活において、このような取引をすることはほとんどないと思います。
なので、この特約が何のためにあるのか、すぐにピンとくる人は少ないのではないかと思います。
今回の事件でも、売買契約の後、元の所有者は買い戻すまでは無償で住んで良いということになっています。
これでは、何のために家を購入したのか分からないですよね。
ずばり、買戻特約の目的は『不動産担保』なんです。
よく考えてみると、売買代金という名目になりますが、実質、お金を貸していることになりませんか?
そして、不動産の所有権は買主(お金を貸した人)に移るので、お金を返す(買い戻す)まで、担保としての効果を発揮するわけです。
そうすると、使用貸借つまり無償で住まわせるのも賃貸借よりも借主に不利な契約にしようという考えが見えてきます。
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抵当権は有効なの?
さて、この事件はここで終わりません。
買戻特約付の売買契約をした不動産に抵当権が設定されたというのです。
そして占有者で元の所有者のAさんは、この抵当権のせいで住宅ローンを組むことができなくなり、買い戻すことができなくなってしまったと言うのです。
すると、買い戻すことができなくなったAさんは、建物を追い出されることに。
その一方で、買主は安値で不動産をゲット、転売したり賃貸したりして利益を得る、というわけです。

これは推測ですが、今回の買戻特約付の売買契約の代金は、抵当権の金額よりもかなり安かったのではないでしょうか?
そのため、抵当権者が抵当権抹消に応じず、住宅ローンを組むことができなかった。
(あるいは、金に困ったからといって、こんな会社にお金を借りるAさんの属性はあまりよくなかったのかも)
しかし、Aさんは騙された、と言えるのか、それは微妙なところじゃないでしょうか。
しっかり自分で契約していますし、相手は書類を完璧に揃えているはずなので、違法性の主張が難しいと思います。
もし、買戻特約の登記をしていたら…
では、Aさんはどうすれば良かったのでしょうか?
私なりに考えてみると、Aさんは登記さえしていれば、形勢逆転していたのではないかと思います。
逆に、登記をしなかったからこそ、このような状況に陥ってしまったとも言えます。
どういうことか。
先述の通り、買戻特約は『登記して第三者に対抗できる』という特徴があります。
買戻特約の登記はかなり強力なものです。
まず、買戻特約のある不動産を第三者に売却しても、買戻権者は、第三者から買い戻すことができます。
また、買戻特約の後に設定された抵当権は買戻権の行使(買い戻すこと)によって消滅します。

なので、とにかく登記さえしていればと私まで悔しくなります。
本日の教訓は、
- お金に困ってもこういう胡散臭い会社からは借りないこと。
- 登記など権利関係の重要な事柄は、相手の言うことを鵜呑みにせず、自分できちんと調べる。
といったところでしょうか。
皆さんは、決して騙されないようにしてくださいね!
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