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法定地上権とは?
不動産競売の資料を見ていると、評価額の計算の過程で「法定地上権」という言葉が出てきます。
- 法定地上権が必要な理由
- なぜ建物の値段が増えて、土地の値段が減っているのか
- 投資における意外なメリット
法定地上権は、競売ではよく出てくる概念なので、理解しておきましょう。
法定地上権が必要な理由は?
まずは、ざっくりとした解説を。
法定地上権とは「その土地の上に建物を所有することのできる権利」のことです。
成立要件は、4つです。
- 抵当権設定時に、土地と建物があること
- 抵当権設定時に、土地と建物の所有者が同じであること
- 土地または建物に抵当権が設定されていること
- 競売の結果、土地と建物の所有者が異なるようになったこと
少し詳しく説明します。
建物は、土地の上にしか存在できませんが、日本の法律では、土地と建物は別個の不動産として扱われます。
したがって、他人の土地の上に建物を建てる、ということができます。
このとき、借地契約などを結ぶわけですが、そうすると建物の所有者には借地権が与えられるわけです。
ところが、自分の土地の上に建物を建てるとき、わざわざ自分に対して土地を貸す、ということをしません。
(自己借地権は原則として認められていません。)
ということは、自分の土地の上の自分の建物には、借地権がないわけです。
すると、土地または建物の一方だけに抵当権が設定され、それが実行され(つまり競売され)、土地と建物の所有者が異なってしまうという事態が起こり得ます。
するとどうでしょう。
借地権のない建物が土地の上にあるので

建物壊して出て行ってくれませんか?
と言われてしまうこともあり得るわけですよね?
それじゃあ、いくらなんでも困る。
このようなケースのために、法律で定めて、その土地の上に建物を所有する権利を認めましょう、というのが法定地上権です。
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なぜ建物の値段が増えて、土地の値段が減っているのか
原則、所有している土地は自由に使えるものです。
ところが、法定地上権があると、土地の所有者は土地を自由に使うことができず、権利が制限されていることになります。
逆に、建物の所有者は、土地から追い出されることない権利を持っているわけです。
したがって、土地の評価額は下がり、建物の評価額は上がります。
実際の例を見てみましょう。

競売の場合、法定地上権の金額は建物の価格の6割程度として計算されることが多いです。
法定地上権相当の金額が「土地利用権等価格」として記載されています。

そして「土地利用権等価格の控除及び加算」という欄で、土地から法定地上権に相当する金額を引き、建物に足しています。
投資における意外なメリット
すると、当然ですが、内訳は変わるものの、土地と建物の合計金額は変わらないわけです。
日本の法律では、土地または建物の一方にしか抵当権が設定されていなくても、一括競売することができ、また実際に一括競売が大半ですから

法定地上権相当額を足したり引いたりしても意味ないんじゃないの?
と思われるかもしれません。
実は、法定地上権の付いている土地と建物を一括で落札すると思わぬメリットがあります。
それは税引後の手残りです。
不動産投資をする際に、表面利回りだけではなく、税引後の手残りについて意識しておくことが重要です。
そんなときに活躍するのが魔法の経費『減価償却費』です。
減価償却とは、「資産の購入金額を数年に分けて計上する」ということです。
どういうメリットがあるかというと「実際にはキャッシュが出ていかない経費」であるため「税額を小さくする効果」があるのです。
この減価償却は、土地には適用されず、建物だけに適用される概念です。
したがって、合計金額が変わらなくても、建物の割合が高い方が
「減価償却費が大きくなる」=「節税効果がある」
と言えるのです。
特に融資を受けながら不動産を所有するときには、「経費にできないキャッシュアウト」である「元金返済」があるため、減価償却費でバランスを取ることが重要になります。
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