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事件概要
債権者が落札するパターンです。
執行官がまとめてくれた資料をもとに、この土地と建物を巡る状況を確認しましょう。
本件土地上の目的外建物は、元々債務者の所有であったが、競売に付されて売却され、申立債権者が落札し所有権を取得している。
債務者は上記の目的外建物の落札者である本件債権者からの交渉に応じず、無断で住居として使用し、占有している状態である。
債務者に対しては、神戸地方裁判所明石支部令和元年(執ロ)第45号建物引渡執行事件が継続している(令和元年8月9日催告、同年9月6日断行予定)。
なるほど。
今回は土地のみの競売ですが、以前にこの土地の上に建てられている建物も同じ債権者の申し立てによって競売されていて、しかも落札したのは債権者自身であったというわけです。
さらに、債務者はその建物に居座り続けて、引渡執行の申し立てもされていると。

債権者の苦労が伝わってきます…
さて、ここで、疑問に思う人も多いかと思います。

競売って、債権者が裁判所に申し立てるものでしょ?
債権者が競売で落札した場合、代金の支払いはどうなるの?
そのような疑問に答えるべく、この記事では『差引納付』という制度についてまとめていきたいと思います。
差引納付とは?
債権者が落札した場合『差引納付』という制度を利用することができます。
どのような制度か順を追って説明しましょう。
そもそも不動産競売というのは、債権者が債務者から債権を回収するための手段の一つです。
不動産競売の流れをざっくり言うと、申し立てを受けた裁判所が債務者の所有する不動産を強制的に売ってしまい、その代金から債権の金額分だけ債権者に配当として渡す、という感じです。
すると、債権者が落札した場合、債権者が裁判所に支払った金銭が、再び債権者に配当として戻ってくることになります。
競売を申し立てる債権者というのは、そもそも債務者からお金をもらえずに困っているわけで、それなのにさらに入札金額分を一時的にであれ用意しなくてはいけないというのは、酷な話ですし、合理的ではありません。
そこで『債権者が競売の買受人になった場合、入札金額と配当金の差分のみ納付すればよい』という制度である『差引納付』ができるようになっているのです。
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差引納付の注意点
差引納付を実際に行いたい場合、定められた期間内に申し出をしなくてはなりません。
その期間は、開札日から売却決定許可が確定するまでです。
その間は大体2週間くらいありますが、なるべく早めに申し立てるのが良いでしょう。
その際には、こちらから入手できる差引納付申出書と物件目録を用意していきましょう。

ただし、他の債権者からの配当異議が出されると、差引納付はできなくなります。
その場合は、短期間で代金を現預金で用意しなくてはいけませんから、結構しんどいことになります。
債権者が落札することって多いの?
純粋に疑問に思いました。
世の中の抵当権者の大半は銀行などの金融機関でしょう。
その場合、不動産を手に入れるというよりは、きちんと債権の回収をするのが目標でしょうから、わざわざ入札してくるなんていうことはないわけです。
では、債権者が落札するってどういう状況なのでしょうか?
おそらく、金融機関ではなく、個人間や法人間でお金の貸し借りをしたときに、このようなことが起こるのでしょう。
考えてみると、収益が出ていたり、立地が良かったりする不動産を手放す所有者というのは、なかなかいないですよね。
ですから、普通に売ってくれと言ったところで、断られて終わりなわけです。
しかし、そのような物件は担保としての価値は高いでしょうから、お金を借りる際に抵当権を設定させることもあるでしょう。

お金を借りるときは、みんなきちんと返せるつもりですから。
で、抵当権者が不動産業や建設業を営んでいた場合、担保にしていた不動産を欲しいと思うことだって当然あるわけですよね。
金融機関でもない法人がお金を出すという場合、所有者と何らかの繋がりがあったりして、担保とする不動産の周囲の土地勘があり、不動産の状況などをよく知っている場合が多いと思います。
貸した金額は返ってこないにせよ、安く不動産を買えたら良いか、くらいに思って納得できるかもしれません。
そんな意味でも、競売というのは、通常では購入のチャンスどころか情報すら手に入らないような良い物件をゲットするチャンスでもあるわけですね。
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